こんにちは! 聖マリア病院、新生児部長、前野です。
お母さん、お父さんから、しばしば聞かれる質問。
「赤ちゃんって、いつから目が見えるのですか?」
そんなとき、
「そんなの、最初から見えているに決まっているじゃない!」
って心では思うのだけど、まあお答えはソフトに。
「生まれた時から、見えてますよ。」
おっぱいを飲ませる時、お母さんの方をじっと見てくるでしょ。
お父さんが顔を寄せると、こっちを見てくるでしょ。
でも、
「少し遠くをみているようで、視線は合わなくて。本当に見えているの?」
とか、
「おもちゃを動かしてあやしても、そっちを見ないんです。」
って言われます。
少し遠くをみているようで、視線は合わない。本当に見ているの?
そうなんです。赤ちゃんは、まだ視力はそれほど良くないし、それに遠くや近くに焦点を合わせる、ということはまだ苦手。
でも、ちゃんと見えてますよ。
ただ、ピントが合わないだけ。
少し遠くを見ているような、、。とか、時には、少し寄り目になっているような、、。バシッと焦点があった感じで見てくれるのは、もう少し大きくなってから。
それでも、視力は0.01ぐらいはある。
(私自身も、強度近視なので、メガネを外せば0.03。でも、ちゃんと見えてます。メガネがないと生活には不便だけど、誰がどこに居るかぐらいは分かります。)
赤ちゃんは、いつも30cmぐらいのところにピントを合わせてます。
この距離って、ちょうどお母さんが、赤ちゃんを抱っこしておっぱいをあげている時の距離。
この距離にいると、お母さんの顔が見えるように神様がしてくれているんです。
なので、オッパイをあげている時、や、哺乳瓶で授乳している時、お母さんの顔をじっと見てきます。
そんな時、お母さんはよそ見なんかしないでね。
赤ちゃんのお顔を見て、いっぱい話しかけてあげてね。
(くれぐれも、よそ見して、スマホ画面見つめたりしないでね。)
「おもちゃを動かしてあやしても、そっちを見ないんです。」
赤ちゃん、おもちゃには興味が無いんです。興味もないものをわざわざ目では追いません。
何に一番興味があるのか?
ヒト、です。そう、人の顔です。
お父さん、お母さんの顔をじっと見つめてきます。
試しに、お父さん、お母さんのお顔、ゆっくり、右や左に移動させてみて。
赤ちゃんの目が、キョロキョロっと、少し遅れて、ゆっくりゆっくりだけど、ちゃんとこっちの方を見てきますよ。
生まれて、まだ誰にも教えてもらっていないのに、人の顔、はちゃんと分かっているんです。
その顔から、お腹の中にいる時から聞き慣れた、お母さんやお父さんの声が聞こえてきたら、、嬉しいでしょうね。そうやって覚えていくんでしょうね。
ネットには、3ヶ月ぐらいから見えるって書いてある?
視力がある程度良くなって、しっかり見えるのはそれぐらいでしょうね。教科書にもそう書いてあります。ネットに書いたお医者さんは、それを見て書いているんでしょうね。
近視の私で言えば、メガネをかけて、しっかり見える状況は、3ヶ月以降。
でも、新生児センターで、いつも実際に赤ちゃんを見ているお医者さんたちは、ちゃんと知っているんです。生まれてすぐでも、目をパチクリして、赤ちゃんがこっちを見てくること。
こんなにしっかりこっちを見てくるのに、見えていないわけないじゃない、、って。
生まれてすぐから見えているんですよ。分かっているんですよ。お父さん、お母さんの顔。
だから、
お顔を見つめて、たくさん話しかけてあげてね。
そして、たくさんたくさん笑顔を見せてあげてね。
豆知識
1983年の外国の論文。新生児専門の医者では結構有名なもの。
生後40分から3日程度の、生まれてすぐ。本当に間もない赤ちゃん。
目の前で、大人の人が、口を開けたり、舌をベーッと出したりして見せます。
そしたら、赤ちゃんも真似をして、口を開けたり舌を出したりする。顔の真似をする、ということが分かりました。
たまたま偶然にしたのでは?なんて言われないように工夫して実験したけど、確かに顔真似しているのだ、ということを証明した論文です。
赤ちゃんって、生まれた直後から、結構すごい能力を身につけているんです。
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