赤ちゃんの黄疸、って、何?なんで?大丈夫?

こんにちは! 聖マリア病院、新生児部長、前野です。

生後数日の赤ちゃんって、皮膚が黄色くなる子がたくさんいます。目の白目のところも黄色くなります。
つまり、新生児黄疸というものです。


黄疸、って聞いたことありますか?
今回は、この新生児黄疸について、お話をしてみます。

どうして、赤ちゃんは黄色くなるの?黄疸になるの?

この黄色い成分、もともとは血液の赤い成分なんです。
いらなくなった赤い成分を捨てるとき、処理する途中で黄色い成分になって、それを肝臓で処理して、「うんち」に捨てるようになっています。
そう、あの「うんち」が黄色いのは、これなんです。
(ちなみに、血液の赤い成分のことをヘモグロビン、黄色い成分のことをビリルビン、と言います。聞いたことありますか?)


赤ちゃんは生まれるまで、お母さんのお腹の中では、うんちができません。
なので、この黄色い成分を肝臓で処理をすると、捨てるところに困ってしまいます。
そこで、肝臓ではなるべく処理しないようにしています。
では、どこに捨てているか?
臍から胎盤に行って、お母さんに渡して、お母さんの肝臓に処理してもらっているんです。
 
生まれてくると、さあ今から自分の肝臓で処理して、自分のうんちに捨てないと、と成るのですが、急にはたくさんは処理しきれません。
そこで、最初の数日は黄色い成分が体に溜まって、皮膚が黄色く見えます。
それが新生児黄疸、というものです。
 
およそ4-5日すると、肝臓での処理が追いついてきて黄疸が自然に無くなってきます。
ただ、何日で処理が追いつくかというのは、かなり個人差があり、もっと長く続く子も良く見かけます。

メモ

ちなみに、、赤ちゃん、てどうして赤ちゃんって呼ばれているか知っていますか?
そうです、赤いんです。

血液の赤い成分(ヘモグロビン:Hb)が濃くて、赤く見えるからなんです。
このヘモグロビンは、呼吸して肺から取り込んだ酸素を、体の隅々まで運ぶ役目をもっています。


赤ちゃんは、お母さんのお腹の中では、酸素が少ない環境で生活しています。お母さんが呼吸をして酸素を取り込んで、それを胎盤を通じてもらうので、もらってくる酸素が少し少ないんです。
そこで、酸素を運ぶこの血液の赤い成分、ヘモグロビン、が濃くなって、酸素が少なくても、体にたくさん酸素を運べるようになっているんです。
生まれて自分で呼吸を始めると、酸素がたくさんあるので、そんなに赤いヘモグロビンは必要なくなります。そこで、赤いヘモグロビンをたくさん壊し始めます。というわけで、黄色い成分がたくさん作られることになります。
これも、生まれた後で、黄疸が強くなる原因の一つになっています。
 

黄疸になっても大丈夫なの?

普通は大丈夫です。
しかし、あまりにも黄色くなり過ぎると、脳にこの黄色い色が染み付いてしまって、後遺症を残すことになります。
どのぐらい黄色くなると困るかというと、黄色いビリルビンという成分の濃度が、25とか30という値を超えると後遺症の可能性がでてきます。

ですので、ビリルビンが20を超えないように治療をしていきます。
お産をした産院では、皮膚の黄色の程度を計測する機械を使ったり、
コニカミノルタのHPより

実際に少量の血液を取って、血液検査でこのビリルビンの濃度を測って、20を超えないように注意しています。
普通は、黄色くても15程度がピークで、その後自然に下がっていきます。
 
ちなみに、子供や大人では、普通はビリルビンの濃度は1未満です。かなり低いですよね。スムースにうんちに捨てられるようになると、これぐらい低いのです。
それが、6程度を超えてくると、皮膚の色が黄色いな、と気付くようになります。
大人では、肝臓に病気があったりすると、黄色くなります。
 

黄疸はどうやって治療するの?

光を当てます。
皮膚に光があたると、その光で、このビリルビンという黄色い成分の性質が少し変化します。そして、黄色い成分が、おしっこに出るようになります。
なので、肝臓がまだ未熟でも、どんどん捨てることができる、と言うわけです。

お産をする産科では、このビリルビンの性質が変わりやすい特殊な種類(波長)の光を出すライトをもっています。黄疸が強い赤ちゃんには、この光を当てるようにしていて、そうすると黄疸が自然に下がってきます。
ちなみにこの光は、まるで日焼けサロンのような色ですが、紫外線ではありませんよ。日焼けはしません。


もし、この光で十分下がらない時には、さらに強力な光をあてないといけません。そこで、地域の新生児センターに赤ちゃんを連れて行って、治療してもらう、と言うことになるお子さんもいらっしゃいます。
そして、もし、それでも黄疸がだんだん強くなってしまう、というような時でも、「交換輸血」と呼ばれるさらに強力な治療法がありますので、心配しなくて大丈夫です。
 

メモ

光が当たると黄疸が良くなる、と言うのは、看護婦さんが発見したそうです。
窓際の明るいところにいる赤ちゃんは黄疸が軽いのでは?と、気付いたのです。



それをもとに研究が始まって上に書いたようなことが分かり、光での治療(光線療法といいます)が開発されました。
 

どんなことに気をつけたらいいの?

4-5日で産院を退院してお家に帰るとき、まだ黄疸が残っていることも多いです。
このまま帰って、大丈夫かな、と心配になる方もいらっしゃると思います。

そんな時、お家でどんなことに注意したら良いのでしょうか。
つぎの投稿で、説明します。

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